研究成果「スギ材のめり込み特性を活用した高靱性軸組工法の開発」

  • 投稿日:2022年04月05日
  • 最終更新日時 : 2022年04月05日
  • カテゴリー: 成果紹介

1 はじめに

地震や風等による荷重から人命及び財産を長期的に護るためには,建築物において靱性の高い軸組及び接合部を構成して倒壊を防ぐことが重要です。そこで,本研究では大変形時に至るまで耐力を維持して軸組の倒壊を抑止する靱性の高い工法を開発しました(図1)。また,接合部の補強方法の検討を行い,スギ材を用いた軸組耐力壁の強度試験を実施して構造性能の検証を行いました。

架構システム

2 実験方法

柱の接合部分から外側の両端部を八角形に加工して横架材の丸孔に貫通させる形式とし,木製の補強材を設けました。接合部の組立方法を図2に,補強材の配置方法を図3にそれぞれ示します。水平荷重試験は図4に示す方法で,桁の片側端部に水平方向の正負繰り返し荷重を加え,荷重と横架材の水平変位を測定しました。

図4 壁の水平荷重試験方法

3 実験結果

図5に試験で得られた荷重-変形角曲線の包絡線を示します。終局時まで顕著な破壊が見られずに荷重が漸増する安定した靱性挙動を示しました。また,図6に補強材の配置と水平方向強度性能の関係を示します。最大荷重は配置Ⅲが低くなる傾向が見られました。次に,軸組材の材質と強度性能の関係について平均年輪幅と終局時変形角の散布図を一例として図7に示します。終局時変形角は各材質との相関が認められず,0.1rad以上の高い数値を示しました。

図5 荷重-変形角曲線,図6 配置との関係,図7 材質との関係

4 おわりに

軸組耐力壁の水平強度試験を実施した結果,補強材配置の適正条件を把握するとともに,開発した軸組工法が部材のめり込みにより変形が進展する粘り強い性状で終局時まで耐力を維持する安定した靱性挙動を示すことを確認しました。