研究成果「芋焼酎における酵母混合醸造法の開発」

  • 投稿日:2022年02月10日
  • 最終更新日時 : 2022年02月10日
  • カテゴリー: 成果紹介

1 はじめに

鹿児島県には100を超える酒造場があり,それぞれが個性豊かな焼酎を製造しています。この様々な銘柄を維持するために製法の多様化は重要です。芋焼酎では,麹菌,酵母,原料芋の種類などを組み合わせることで酒質を変えることができます。酵母は,アルコール発酵の主役であり,酵母の種類により生産するアルコールや香気成分に違いが出ます。本研究では,従来より行われている単一酵母による単独醸造に対し,複数の酵母を同時に使用する混合醸造法を開発することで,酒質の多様化を目指しました。

 

2 実験方法

芋焼酎製造における酵母混合醸造は,米0.2kg,芋1kgの規模で行いました。酵母は,鹿児島2,4,5号及びKo-CR-37(以下,香り酵母)を用い,YM培地による培養液を仕込み時に2×106cells/gとなるよう添加しました。なお,混合醸造の試験区では,総菌数で各酵母が同数となるよう添加しました。

 

3 実験結果と考察

酵母割合では,1次仕込み時に同一総菌数となるよう酵母を添加しましたが,2次もろみ4日目の酵母割合は大きく変化していました(表1)。この酵母割合の変化は,酵母の増殖速度の差に由来すると考えられました。

熟成もろみの総菌数では,2号の単独醸造は3.6×108cells/gと他の酵母と比べて若干少ない値を示しました(表2)。

 

 

一方,2号を含む混合醸造では,5.5~6.4×108cells/gと高い値を示し,相手側酵母の増殖により総菌数が補われたと推察されました。もろみアルコール分では,2号の単独が14.9度に対し,他の酵母は15.6~15.9度と2号が低い値を示しました。一方,2号を含む混合醸造では15.6~16.0度とアルコール分が増加していました。試留酸度では,2号の単独が3.0に対し,他の酵母は1.4~1.7と2号が高い値を示しました。一方,混合醸造では,2号と香り酵母の組合せが2.0と両酵母の中間的な値を示し,それ以外の組合せでは1.3~1.7であり,試留酸度が高いという2号の欠点が改善されていました。

次に,混合醸造の酒質の傾向を見ると,2号を含む混合醸造では,一般に欠点とされる酸臭が強く抑制されているものの,相手酵母の香味に2号由来の複雑な香りと味わいを付与していました。4号を含む混合醸造では,4号の特徴であるエステル由来の甘い香りと味わいを相手酵母の酒質に付与した酒質となっていました。5号を含む混合醸造では,特徴の弱い5号の酒質に相手酵母の香味の特徴を付与した酒質となっていました。

4 おわりに

本研究では,芋焼酎における酵母混合醸造について検討しました。混合醸造では,各酵母の増殖速度の差によって酵母割合が変化し,その酵母割合が発酵経過や酒質に影響を与えていました。混合醸造による焼酎は各酵母の特徴をあわせ持ったものであり,酒質の多様化を実現できる製法であることが分かりました。

(食品・化学部)